高校、あるいは大学を卒業して働くうちに、「やっぱり専門的な技能や資格が必要」と感じたり、「本当は別にやりたいことがあった」と気付いたり。そんな社会人のためにも、専門学校は広く門戸を開いています。いったん社会を経験してから入学してくる人たちは勉強に対するモチベーションが高いので、理解や習得も比較的早く、積極的に授業に臨む姿が他の学生たちの良い刺激になるという声もよく聞かれます。このように転職や再就職を目指して入学を希望する人のために、多くの専門学校では「社会人入学枠」を設けて対応しています。高校や大学の新卒者たちとは別に選考を行ったり、入学金や授業料が一定額免除になる「社会人特待制度」や低金利の学費ローン制度など、さまざまな優遇措置も用意されています。
仕事を続けながら専門学校で勉強したいという人の場合、夜間部の学科に通うほか、通信制や単位制の学科で学ぶことも可能です。自宅教材やeラーニングなどを使った平日の学習と定期的なスクーリングによる通信制の学科、修業年限にしばられず単位を満たしたときに卒業できる単位制の学科、あるいは資格試験対策などに的を絞った短期コースも数多く開設されていますから、それぞれの目的や都合に合わせて学校を選択することができます。
社会に出てから転職や再就職を目指して新たな技能を学びなおそうとするときに利用できる国の助成制度があります。
対象となっている専門学校などの講座を修了した場合、受講料の一部がハローワークから支給されます。
支給額:受講料の20%相当額 (上限10万円/最長1年)
支給額:受講料の50%相当額 (上限120万円/最長3年)
ハローワークの就職支援と連携して、専門学校や民間の教育機関等で実施される受講料無料の職業訓練です。
対象となる講座は、いずれもインターネットの「教育訓練給付制度 厚生労働大臣教育訓練講座検索システム」もしくは最寄りのハローワークで検索できます。
専門学校入学者のうち、大学や短大を卒業した人、あるいは大学や短大を卒業後に社会人経験がある人は、令和5年度の文部科学省の学校基本調査によると約12,600人、専門課程の入学者約240,000人の5.2%を占めています。一方、東専各協会調査研究事業部の調べによると、令和5年4月都内専門学校入学者に占める大卒者等の割合は、夜間部では5割を超えています。大卒者等が専門学校に再入学をする理由は「就職のため」が最も多く、そのほとんどが「資格取得」や「専門的な技術や知識の修得」を目的としています。大卒者の就職状況は近年好調ですが、年齢に関わらず、就職に向けて実践力を身に付けるための学びの場所として専門学校が注目されていることは間違いありません。
令和5年3月に全国の大学を卒業した約59万人のうち、「無期雇用」いわゆる正規の職員として就職した人は約72.4%。一方で、「有期雇用」の非正規やアルバイト、あるいは就職や進学の準備中など、不安定な状況にある人を合わせると15%になります。なかでも見逃せないのは、「進学、就職いずれの準備もしていない」いわゆるニート状態の人が4.2%(約2万5千人)いるという事実です。大学4年間の過ごし方、あるいは高校卒業時点での選択の是非が問われることにもなりそうです。
都内の専門学校に在籍する「大卒等入学者」たちを対象に行った東専各協会のアンケート調査によると、「専門学校に入学した理由」では、「資格取得や検定合格のため」「転職や再就職のため」「勉強したいことが大学ではできなかった」が上位に並んでいます。また、「大学に進学した理由」については半数以上が「大学で勉強したいことがあった」と答えているものの、「やりたいことがなかったのでとりあえず」や「なんとなく」といった消極的な理由を上げた人も2割ほどいました。
いま、高校生の進路選択において、「何をやりたいのかわからない」という生徒には「とりあえず」大学進学を勧めるという指導が少なからず見られます。大学全入時代といわれる中で、「大卒」の肩書きが卒業後の就職を約束してくれるわけではありません。意欲や目的意識が希薄なまま大学に進学しても4年間で得られる成果は少なく、かえって就職活動を難しくしかねないのです。
大学と専門学校相互の編入措置も弾力化されていますから、途中での進路変更も念頭に置きつつ、明確な目標がない生徒に対しては「大学か専門学校か」という選択とともに、「大学も専門学校も」というキャリアプランを視野に入れてみるのも一考です。