専門学校の基礎知識01
「生きる力」が求められる時代に存在感を示す専門学校
高等学校卒業者の7割以上が進学する時代。大学への進学率が上昇傾向を続ける一方で、目指す職業に必要な技能を修得しようと専門学校進学を選択する生徒も、ここ数年は16~17%で推移しています。大学によっては入学の難易度が下がったことで全体的な学力レベルの低下が問題となっています。また、とくに目的もなく「とりあえず大学へ行けば就職に有利」という漠然とした理由で入学する者が増え、学生生活や就職活動で悩みを抱える学生の対応に苦慮している大学も珍しくありません。こうしたことを背景に、これまで日本の学校教育の中では軽視されがちだった「職業教育」の重要性が、いま改めて見直されています。社会人として生きていく力を養い、実践的な教育で実績を積み重ねてきた専門学校は、高等教育体系の中ではっきりとその存在感を示しています。
「専門士」と「高度専門士」
専門学校の2年制以上の学科を卒業すると「専門士」、4年制以上の修了者には「高度専門士」の称号が与えられます。「専門士」の称号が与えられる学科の卒業者は大学への編入が可能です。「高度専門士」の称号を得ると大学院への入学資格も得ることができます。これらの称号は企業において採用・処遇面で評価されるとともに、高等教育機関を修了した証明として認知されています。
「専門士」の称号が与えられる学科の要件
- 修業年限が2制以上の学科であること
- 卒業に必要な総授業時数が1,700単位時間以上であること
- 試験などによって成績の評価を行い、それに基づいて卒業の認定を行っていること
「高度専門士」の称号が与えられる学科の要件
- 修業年限が4年制以上の学科であること
- 卒業に必要な総授業時数が3,400単位時間以上であること
- 体系的な教育課程を編成していること
- 試験などによって成績の評価を行い、それに基づいて卒業の認定を行っていること
大学を出てから専門学校で「就職力」を
令和5年度の文部科学省の学校基本調査によれば、大学や短大を卒業後に専門学校に入学した人の数は約1万3千人でした。この中にはいったん社会人を経験した人なども含まれますが、東専各協会が毎年行っている調査でも、大学などの高等教育機関を経由して入学してくる人の割合は、例年1割以上を占めていることがわかります。
大卒者たちが専門学校に再入学する理由はもちろん就職のためで、その多くは「資格取得」や「専門的な技能・知識の修得」を目的としています。「大学の就活で自分を見失ってしまった」「希望する企業の内定が取れず大卒後はアルバイトをしていた」と再起を賭けて入学してくる人や、中には「本当は高校から専門学校に行きたいと思っていたが、周りに説得されてとりあえず大学に行った」という人も。専門学校は年齢や経歴にかかわらず、目標を定めたその時からスタートできる学びの場でもあるのです。
高卒の他、大学卒、社会人、外国人留学生も
専門学校は高校新卒者だけでなく、就職のために資格や技術を取得しようという大学・短大卒業者、転職やステップアップのために学びたいという社会人経験者、また日本の先進技術を学ぼうという海外からの外国人留学生など、さまざまなキャリアの人々を受け入れて、多様なニーズに応える教育を展開しています。
専門学校と「無認可」の違い
専門学校は都道府県知事の認可により設置されています
卒業後の称号
修了すると「専門士」「高度専門士」の称号が与えられます
専門学校ではさまざまな人びとが学んでいます。
目標に向けた周到なカリキュラムと一人ひとりに対応する親身な指導
専門学校が就職に強いと言われるのは、全体的な就職率の高さだけが理由ではありません。就職した人のうち「関連分野の仕事に就いた者」の割合が多くの分野で9割以上であることこそ、専門学校教育の成果と言えるでしょう。
中でも、国家資格の取得が就職の条件となる仕事が多い医療関係や衛生関係、教育・社会福祉関係などでは、ほぼ100%に近い数字を毎年維持していて、まさに「手に職」系の強みをいかんなく示しています。
そしてそれを実現するために、専門学校の就職指導においては、学生一人ひとりの希望や適性と就職先とのマッチングに向けて最大限の努力を払っています。
入学から卒業まで、徹底したフォロー
大学生の就職活動は、いまやインターネットの就職情報サイト頼み。企業の情報収集から応募まで、自力で行っている学生がほとんどです。それに比べて専門学校の就職活動は学校主導型ですから、学生は授業に集中しながら効率的に就活を行うことが可能です。専門学校の就職指導の大きな特徴の一つは、就職指導の専門スタッフとクラス担任などとの連携体制がしっかりとしていること。普段の学生をよく知るクラス担任と、企業の採用情報に精通しているスタッフが連携することで、学生一人ひとりの希望と適性に合わせた企業選びが実現できるのです。キャリアカウンセラーを常駐している学校も多く、学生たちが様々な悩みを気軽に相談できるよう配慮しています。また、出身地などへのUターン就職を希望する学生や、日本での就職を希望する外国人留学生への対応も万全。卒業後の転職や再就職の相談に応じる学校もあるほど、充実の指導態勢を整えています。